新橋ストーカー殺人事件(秋葉原耳かき店員殺人事件)
事件概要

2009年8月9日午前9時頃、東京都港区西新橋の民家で、江尻美保さん(当時21歳)と祖母の鈴木芳江さん(当時78歳)が襲われる事件が発生した。
2人は顔や首など刃物で数ヶ所を刺されており、祖母の鈴木芳江さんは間もなく死亡した。
江尻さんは病院に搬送されたが意識不明のまま、9月7日に死亡した。

殺害された耳かき店店員 江尻美保さん(当時21歳)

 

警視庁は事件発生時に現場にいた、千葉県千葉市美浜区在住の林貢二(当時41歳)が犯行を認めたため現行犯逮捕した。
現場から犯行に使用された刃物と、林が持参していた鞄の中から血の付いた鉄製のハンマーが発見された。

犯人の会社員 林貢二(当時41歳)

 

 

 

背景

江尻さんは秋葉原にある耳かきサービス専門店で働いており、同店舗で1番人気であった。
同店舗のサービスは、浴衣姿の女性従業員の膝枕で耳掃除をしてくれることで、男性客からの評判が良く、週末は予約で一杯になるほど繁盛していた。
林は2008年春頃に同店舗を始めて訪れ、サービスを担当した江尻さんを気に入り指名して通うようになる。
6月頃には、毎週土日に数時間ほど江尻さんは指名し通い詰めるようになる。
7月頃、江尻さんを駅で待ち伏せしたと疑われ、1週間ほど同店舗に通うのをやめたが、江尻さんの店舗で使用しているブログに、林と江尻さんしかわからない事が書き込まれているのを見て、再度通うようになる。
その後、金曜日の夜にも店舗に通うなど日数や滞在時間もさらに増え、長い時には1日に7〜8時間店で過ごすようになる。
11月、林は江尻さんから同店舗の系列店でも働く事を伝えられ、その時間のすべてを林が独占するような関係になった。
このような事もあり、林は江尻さんから上客として扱われ、メールアドレスを教えてもらったり、プライベートの話をされたりした事等から、自分が特別な客として思われていると感じた。
理性では1客と従業員の関係とわかりつつも、江尻さんへの好意を募らせ恋愛に近い感情を抱くようになる。
その一方、江尻さんはハヤシを上客として扱っていたが特別な感情はなかった。
2009年4月初旬、江尻さんは林から店外での食事に誘われた事等を契機に、林への対応を考えるようになる。
4月5日、林は江尻さんと仕事終わりに食事に行く約束をしており店舗を訪れようていたが、接客中に江尻さんから体調が悪いからと食事に行けないと伝えられ、楽しみにしていた食事に行けなくなった事や、体調が悪いなら早退するべきだと話した事に応じてくれない態度にいらだち、自分の足や壁を殴り「もういい、もう来ないよ。」と捨て台詞を残し店を出た。
同日、江尻さんは同店舗の店長に相談し、林を店舗へ出入り禁止にする。
林はそれまで江尻さんと喧嘩をしても、すぐに仲直りしていた事もあり、この時も謝罪をすればサイト店舗に通えるようになると思い、数日して謝罪メールを送ったところ、江尻さんから「もう無理です。もう店に来ないっ言ったじゃないですか」と返信を受け、なぜ来店を拒否されたのか理由がわからず困惑した。
林は来店拒否の理由を聞くために店舗の外で、江尻さんに声をかけた際にも「もう無理です」と言われ逃げられる等したため、「なんでだろう?」と思い悩み、6月頃に抑うつ状態に陥っていた。
7月19日、そのような精神状態のまま、江尻さんの自宅周辺で待ち伏せし声をかけたが、林の事をストーカーであると感じ恐れるようになっていた江尻さんに逃げられ、翌日メールを送ったが、送信出来なかった事から、初めて江尻さんから拒絶されている事を理解した。
林は、もう店に行って江尻さんとの楽しい時間を過ごす事が出来ないと絶望し、自分を拒絶している理由がわからず、ただ自分を拒絶している江尻さんに対し、愛情から殺してやりたいと思うほどに怒りや憎しみを感じるようになり、ついには犯行に及んでしまった。

犯行の行われた東京都港区西新橋の江尻さん宅