逗子ストーカー殺人事件
事件概要

殺害されたフリーデザイナー 三好梨絵さん(旧姓 柴田 当時33歳)

 

2012年11月6日午後3時頃、神奈川県逗子市小坪のテラスハウスにて、付近を通行中の男性配達員より「外で首を吊っている男性がいる。」と119番通報を受けた。
通報を受けて駆けつけた消防署員が、テラスハウスの庭先にて首を吊っている男性と、部屋の中で血まみれで倒れている女性を発見した。
消防署員が到着した際には、2人とも心肺停止状態だったといい間も無く死亡が確認された。
テラスハウスには鍵がかかっており、女性には刺し傷があり、室内にて刺したと思われるナイフが見つかった。
死亡していた男性は、小堤英統(当時40歳 無職 元高校教師)であった。

犯人の元高校教師 小堤英統容疑者(当時40歳)

 

女性は、小堤と以前交際していた三好梨絵さん(旧姓柴田 当時33歳 フリーデザイナー)であった。
神奈川県警の捜査で小堤は三好さんに以前より、ストーカー行為を繰り返した末、テラスハウスに呼び出し殺害した後、自殺したと見られる。
殺害した11月6日は小堤の40歳の誕生日であった。

三好さんが殺害された神奈川県逗子市小坪の三好さん宅

背景

・事件への経緯

2004年頃、バトミントンサークルにて小堤と三好さんは出会い、2年ほど交際をした後、2006年6月頃、三好さんが一方的に別れを切り出した。
小堤は全く別れを納得していなかなった。
2人は当時、東京都内に住んでおり、三好さんは結婚前ですので柴田性であった。
2006年頃、小堤より「お前だけ幸せになるのは許せない」「人生に終止符をうつ」等の内容のメールが届くようになり、三好さんは当時住んでいた東京都内の最寄り警察署に相談すると、しだいにメールが途絶えた。
この頃に小堤は、大量の薬を飲み自殺未遂をする。
2008年夏頃、三好さんは結婚し神奈川県逗子市に転居した。
この際に苗字も柴田から三好に変わったが、小堤には知らせずにいた。
また三好さんは仕事の幅を広げるため旧姓を使用して、SNSをはじめた。
2010年4月頃、三好さんのSNS投稿により、小堤が三好さんの結婚を知り、再度嫌がらせメールが届くようになる。
この頃、小堤は仕事を辞めて自宅に引きこもっており、三好さんのSNSを見つけ監視していたようで、結婚した事実を発見してしまった。
2010年12月、三好さんは小堤からのメールに対し、神奈川県警逗子署へ相談に訪れる。
逗子署は相談を受け、家族を介し小堤に口頭注意を行うと、小堤はまたもや自殺未遂をはかる。
三好さんは小堤からのストーカー対策として、自宅の表札を外し、住宅地図に記載されている名前も消し、名刺やSNSのアカウント名をペンネームに変え、眼鏡をかける。
2011年4月頃、小堤からのメールの内容が次第にエスカレートし、「刺し殺す」等の内容のメールが1日に80通〜100通届くようになり、三好さんはその旨を再度である逗子署へ相談する。
逗子署は相談を受け、脅迫事件として捜査を開始し、三好さんの自宅に緊急通報装置を設置する。
小堤は三好さんへのストーカー行為を継続し、三好さんの以前勤めていた勤務先に、宅配のピザや寿司を三好さんの名前を使用し、100人前注文した。
同年6月、三好さんへの脅迫罪容疑で、小堤が逗子署に逮捕される。
この際、警察官が三好さんの住所や新しい名字が書かれた逮捕状を全文読み上げ、三好さんが知らせたくなかった情報を小堤に知られてしまう。
同年7月、ストーカー規制法に基づき小堤に警告が出される。
同年9月頃、懲役1年執行猶予3年の有罪判決を受ける。
三好さんの自宅にレンタルした防犯カメラが設置される。
釈放された小堤は、再犯の恐れがあるとし保護観察処分となり特別遵守事項が課せられる。
この時に特別遵守事項を課せられている事を、三好さんや警察には知らなかった。
2012年3月上旬、小堤のストーカー行為が収まったと判断し、警察は捜査を終了する。
この際に、三好さん宅に設置した防犯カメラを外す。
2012年3月下旬から4月上旬にかけて、三好さんは小堤より計1089通に上る嫌がらせメールが送られてくる。
メールには「結婚の約束をしていたのに裏切られた。契約不履行の慰謝料を払え。」等と綴られていた。
三好さんは逗子署に相談するが、「殺す」等の言葉が入っておらず違法行為に該当しないと立件を見送る。
4月上旬以降、メールが送られて来なくなり、三好さんから逗子署に、静観したいとの申し出を受けたが、自宅周辺の巡回は実施した。

 

・ストーカー加害者の行動
小堤は2011年の逮捕前及び判決が確定後から、Yahoo知恵袋にて複数のアカウントを使用し約400件にわたり、三好さんの居住地域や住所を特定する為の質問や、パソコンや携帯電話の発信による個人情報収集に関する質問、刑法等の法律の解釈に関する質問、凶器に関する質問等の質問を行い、三好さんの住所を特定し殺害する準備の為の情報を収集していたとみられた。
この質問の文章は、三好さんの名前や自分が殺人事件を起こす意思を隠し、善意の人物による質問提示と偽って投稿していた。
事件直前の2012年11月には探偵事務所に、三好さんの居場所特定の依頼をし、探偵事務所より所在確認の連絡を受けている事が判明している。
なお小堤は探偵事務所に依頼する際、「お世話になった人を探して欲しい」等と偽って依頼をしている。
事件直前に、嫌がらせが収まっていた事もあり、三好さんは防犯カメラを返却してしまっている。
事件当日に、三好さん宅付近のコンビニエンスストアの防犯カメラに、小堤が段ボール箱を持ちながら買い物をする姿が映っていた事や、三好さん宅の玄関先に段ボール箱を放置していた事から、小堤は近隣の住民に怪しまれないよう運送業者を装って犯行に及んだ可能性がある。
小堤は鍵の空いていた1階の窓より侵入し、犯行に及んだとみられている。

 

・事件後に判明した違法行為
2014年1月、小堤が依頼した探偵事務所がさらに依頼した調査会社の経営者が、三好さんの住所を聞き出すため、三好さんの夫を装い逗子市役所に電話をかけ、「妻の税金支払いの請求が来ているが、住所を間違えてないか?」等と問い合わせをし、応対した市役所職員に三好さんの住所情報を調べる為のPC操作をさせた、偽計業務妨害罪容疑で逮捕された。
またこの際、三好さんは逗子市役所に個人情報閲覧制限の要請をしていたが、調査会社が電話をかけたさいに応対した総務部納税課の職員のパソコンからアクセスすると、閲覧時に警告表示が出るだけで閲覧自体はできていた。
また市役所の閲覧記録にあるIDは、60代の納税課の男性であったが、離席する際にログアウトするなどのマニュアルが守られておらず、勤務期間中は常に同一IDにてログイン状態であり、他の職員が自席以外のパソコンを操作する事が常態化しており、三好さんの情報を漏らした可能性がある職員全員が、情報流出を否定したため、三好さんの情報を流出させた職員を特定する事は出来なかった。